第十三話『子取り』

97 :里中美子 ◆UIiQ5N7wO6 :2006/12/17(日) 00:01:17 ID:6OoJ2e6jO
【013/100】
一昨年亡くなった近所のお爺ちゃんが、幼い頃に体験した話。

「悪い子は、お化けにさらわれるぞ」
と、よく大人は言う。
モモンガア、や、モモンジイ、という悪い子供をさらう妖怪の名を、
どこかで聞いた事のある人も多いかもしれない。
お爺の田舎では、それを「子取り」と呼んでいた。
それは、稲刈りの終わりの季節だった。
お爺が友達と連れだって田圃道を歩いていると
「子取りが来たぞぉ〜!」
という声がする。
見れば、大きな袋を持った、身長二メートルはあろうかという黒い影が疾走してくるではないか。
やばい、逃げろ!!隠れろ!!
子供達は、稲刈り後の田んぼの中に飛び込み、草の影に身を潜めた。
子取りは、お爺たちには気付かず、走っていってしまった。
お爺は確かに見た。
それが、本当の妖怪だったのか、まぼろしだったのか。
お爺が亡くなった今。知る術は、無い。
【完】