第五十三話『体育座り』

207 :里中美子 ◆UIiQ5N7wO6 :2006/12/17(日) 03:46:21 ID:XTPx7mngO
【053/100】

数年前に実際体験した話。

仕事が終わって、仲間数人と帰路を急いでいた。
真夜中だった。
道路をひた走っていると、仲間の一人が、「ア…」と唸って、眉をひそめた。
「どうしたの?」
「今、路肩に誰かが体育座りしていた」
ゾッとした。
わたしは窓側に乗車していて、ずうっと道端を眺めていたが、そのようなモノは見えなかったからだ。
「見た。体操服みたいな服、着てた」

半信半疑でUターンして戻ってみた。やはり誰も居ない。
周りを探してみると、ガードレールの脇の、目立たない場所に、お地蔵さまがちょこんと佇んでいた。

不幸な事故にあった子供の霊が、まだ成仏できずに、そこにいるのだろうか…。

【完】