第九十四話『北枕』

327 :404 ◆aWkNiL.XHM :2006/12/17(日) 08:23:35 ID:I/k+u63p0
【94/100】「北枕」

私は子供の頃寝相が悪い事で家族間で有名でした。


ある温泉宿に宿泊に行った時の事です。
祖父が車を運転して濃い霧のかかる山を
ゆっくりと昇って行く道でした。
段々と上に行くにつれて前が見えなくなり、
スピードを抑えて進みましたが途中で
小学2年生になる従姉妹が
「トイレに行きたい」
と言い出したのですが、山の上でトイレはなく
仕方なく道の脇に車を止めて少し離れた場所で
してくるように言われました。
始めは車から離れる事躊躇していたのですが
段々我慢できなくなったのか決心したように
離れていきました。

私たちはしばらく車内で待機していたのですが、
突然従姉妹の叫びと泣きながら走ってくるのが
みえて、叔母は慌てて従姉妹にかけよりました。

…しかし、泣いた理由をいくら聞いても従姉妹は
青い顔をして首を横に振るばかりで
決して答えてはくれませんでした。

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328 :404 ◆aWkNiL.XHM :2006/12/17(日) 08:27:30 ID:I/k+u63p0
【94/100】(2/2)
宿には夕方頃に到着して、
東側の窓から見える滝が綺麗だったので
皆で眺めていました。
それから夕食を食べ終わり満腹、家族皆旅の疲れか
すっかり眠くなってしまいその日は
早々に寝ることにしました。
しきたりなどにうるさい祖母が、
「北枕はだめよー」
といったので皆で窓がわに枕を置いて就寝。
――――夜中、眼がさめた私は奇妙な物音が
していることに気がつきました。
『とん、とん、とん…』
『ぱちん、ぱちん、』
『ばちん、』
なにやら段々と音が大きくなっていきます。
その音はどうやら窓側からしているようなのです。
…とそのとき、窓が自分の左手に見えている事に
気付き、そのあとに恐怖を覚えました。
私はいつもの寝相の悪さで北向きになってしまっていたのです。
音はその時、
『ばちんばちんばちんばちん』
と間隔も短く、大きさをましていました。
ふとんにもぐりながら頭の向きをいそいで戻すと、
音は段々と消えていきました。
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あとから聞いた話によると、その滝ではよく
自殺者が出るそうです。

【完】